平城遷都1300年祭で復元された平城宮大極殿に壁画を描いた上村淳之さん(77) |
丹塗りの柱と純自の壁に、柔らかな淡い色彩の四神と十二支の像が映える。
祖母・松園、父・松篁(しようこう)がともに文化勲章を受けた日本画一家。芸術院会員も3代目。奈良・平城の自宅に約200種、1000羽を超える鳥たちと暮らす花鳥画の第一人者が、遷1300年を機に復元された平城宮大極殿に命を吹き込んだ。
長年、多種多様な鳥の生態を見続けてきた目は、キトラ古墳の壁画を見て「朱雀のモデルは錦鶏鳥(きんけいちょう)」と一目で見破った。一方で、自虎などの肩に生えた羽や険しい表情は西側文化の影饗と断じ、「私は日本人の思いにある四神十二支を描きたい」と考えた。
試作は四神だけで40枚以上におよんだ。「一木一草に神仏宿る、という思いが花鳥画の基本。神様だからといって特別な形をしている必要はない」。できあがったのは、柔らかでヒューマニティーあふれる四神十二支。「暗殺や戦乱が続いた当時、平城京を造った人たちには、もっと穏やかで平和な国をつくりたい、という思いがあったはず」。同じ思いを壁画に込め、現代そして未来に託す。
文・澤木政輝/写真・小関勉 【毎日新聞 5/14】