◆11月3日 春日大社=文化の日萬葉雅楽会(3) |
曲目解説
◆ 舞 楽
舞楽は飛鳥・白鳳から奈良時代にかけて、中国やシルクロードを経てインド・東南アジアや古代朝鮮半島の新羅・百済・高麗などのアジア各地から伝えられ、我が国において大成されたもので、のちに日本でつくられたものも含めて、その伝来や特徴から「左舞」と「右舞」に分けられる。左舞はインド・中国・インドシナ方面から伝来し、「唐楽」とも呼ばれ主として赤色系の装束を用いる。右舞は朝鮮半島・渤海国等から伝来し、「高麗楽」とも呼ばれ、主に緑や青色系を基調とした装束を着用して舞う。その舞い振りも左舞の豪壮、華麗であるのに対し右舞は繊細で優雅なものである。演奏は普通、左舞と右舞を一対(番舞という)とし、その何組かが舞われるのが例となっている。おん祭では5番10曲が舞われる。
これらの雅楽は、天下の三方楽所といわれた京都・奈良・天王寺に伝わりそれぞれ特色にある芸能を受け継いできた。奈良では春日大社を中心に社団法人南都楽所がこの南都舞楽の伝統を受け継いでいる。
◇萬歳楽(まんざいらく)一左舞
随の揚帝が楽正白明達に作らせたもので、鳳風が萬歳と唱えるのを舞に表わしたものといわれている。
慶賀の際には必ず舞われる荘重閑雅、晶位の高い曲である。舞人は4人、赤の襲装束(かさねしょうぞく)に鳥甲を冠っている。
◇延喜楽(えんぎらく)=右舞
醍醐天皇の延喜八年(908)に藤原忠房が作曲し、敦実親王が舞を作り、そのときの年号をとって曲名とした。また一説には笛師の建部逆麿が作曲したともいう。
舞人は四名で緑色の襲装束を着し、萬歳楽と一対をなし慶賀必奏の曲である。
◇胡飲酒(こんじゅ)=左舞
別名宴飲楽ともいい、胡国の人が酒を飲み酔った姿を舞にしたといわれ、酒杓をかたどった檸を持って舞ったとも、胡国の王が笏を持って舞ったとも言われている。
今日では楽太鼓の檸に似た漆塗りのものを持って、長い髪と大きな鼻が特徴の重厚な面をつけ、白地に牡丹唐草の刺繍をあしらった禰稽装束を着し、烏皮沓という革製の黒漆沓を履いて舞う。
序と破からなり舞台を縦横無尽に動くすこぶる快活な曲である。
終演の3時頃はスッカリ冷え込んできて、肌寒ささえ覚える位だった。樂人の人達は地面に座っての演奏だから冷えたのではないだろうか。普段接することのない雅楽を目の辺りにして、秋のひとときを日本の文化の一端に浸ることが出来た。