版木に刻んだ神仏への庶民の思い |
これは同研究所が平成7~27年度に実施した県内約30の寺社に伝わる版木数千点の調査の集大成として開催されるもので、経典や仏画、お札などの印刷に使われた、鎌倉時代から現代までの版木約80点を公開するもの。
会場では、「版木の時代の幕開け」「版木の資科学」「版木に刻まれた信仰対象」などのテーマに分けて紹介される。
室町時代の「長谷寺式十一面観音菩薩三尊像」の版木は光背型の形状を持つ。65.8×33.9cmの大きな摺り物の細かな刻線に圧倒される。
「尊覚版智光曼荼羅」(江戸時代)は元興寺の僧・智光が夢に見た極楽浄土を描いたもので、版木は元禄十四年の同寺の僧が作った。
ならまちの十輪院の隣に有る興善寺の六字名号阿弥陀立像版木は、摺り物が展示されていないが、東北・関東さらに四国にまで同じ図柄の摺り物が所在しており、広く信仰があったことが判っている。興善寺版木では判然としないが、“空海”と刻まれる。
ネズミよけのための『猫絵札」(江戸時代)や魔除けの「角大師像」(同)など生活に根ざした願いを込めた版木のほか、裏側に「いまいましい摺りにくい こんなしごといやなり」と職人の愚痴が書かれた珍しい版木も展示される。
また、昭和36年に版画家の棟方志功が元興寺に奉納した「地蔵菩薩立像」の版木と刷り物も紹介されていて、興味深い展覧会と言える。
午前9時から午後5時開館。入館料(同寺拝観料含む)は大人600円、中高生300円、小学生100円。
問い合わせは同寺、℡:0742(23)1377。