正倉院学術シンポジウム2013「鑑真和上と正倉院宝物」 |
正倉院宝物に関する研究成果を論じ合う「正倉院学術シンポジウム」(奈良国立博物館主催、読売新聞社後援)が27日、奈良市の県新公会堂で開かれた。唐招提寺を開いた中国・唐の高僧、鑑真の没後1250年を記念して「鑑真和上と正倉院宝物」をテーマに研究発表と討論が行われた。事前申し込みの約200人が参加。
スケジュール
挨拶 奈良国立博物館長・湯山賢一氏
【第一部 研究発表】
・「鑑真和上坐像について」一平成お身代わり像制作で得られた新知見一」
公益財団法人美術院国宝修理所研究部長 木下成通氏
・「正倉院宝物の僧衣について」
宮内庁正倉院事務所保存課整理室主任研究官 田中陽子氏
・「唐招提寺金堂と正倉院宝物にみる彩色文様」
奈良教育大学教授 大山明彦氏
・「鑑真和上の書状」
奈良国立博物館学芸部長 西山厚氏
【第二部ディスカッション】
パネルディスカッション
パネリスト:上の4名の方に内藤栄氏(奈良国立博物館学芸部部長補佐)が加わり、読売新聞大阪本社記者の戸田聡氏が司会進行をつとめられる。終了18時
読売新聞に記事あり。「目が不自由」の説を覆す?鑑真の書状
京都の美術院国宝修理所の木下成通・研究部長は、同寺の鑑真和上坐像(国宝)の「お身代わり像」を制作した際の調査で、同像の表面に油が塗られていることが判明したことを紹介。正倉院宝物の伎楽面にも彩色保護のために油を塗った例があり、「今後、仏像の修理でも油を塗布している可能性を考えて調査する必要がある」と指摘した。
西山厚・奈良国立博物館学芸部長は、鑑真は目が不自由だったという定説を、正倉院に残る鑑真の書状から検証した。自由な筆跡や余白を認識した書き方などから、弟子の代筆や目が見えない人が書いたとは考えにくいとして、「鑑真は来日時は目が見えていて、最晩年に失明した」との自説を披露した。興味深い研究成果に、参加者も熱心に聞き入っていた。