帝塚山大学「新・奈良学」プロジェクト |
奈良を拠点に活動した仏像写真家の一人、永野太造氏(1922-1990)。『奈良六大寺大観』、『大和古寺大観』等の美術書での写真作品は多くの人々を魅了しましたが、その活動の全貌はこれまであまり明らかにされていませんでした。
この度、永野太造氏撮影のガラス乾板約7000点が帝塚山学園に寄贈されることになり、帝塚山大学奈良学総合文化研究所と帝塚山大学附属博物館で本格的な調査研究が始まることから、これを記念して永野太造氏の写真作品とガラス乾板の展示を行います。併せて、関連する図書や同氏が愛用した写真機材を展示いたします。 記念講演会とともに、作品の数々をぜひご覧ください。
【「永野太造展」開催概要】
会期:2015年12月12日(土)〜13(日) 10:00~17:00
会場:奈良県文化会館 1F「展示室A」
【記念講演会】
日時:12.12(土) 14:00~(受付開始/13:30)
会場:奈良県文化会館 1F「展示室A」 聴講無料
定員80名(先着順/事前申込不要)
▼14:00~15:00 第1部/文化史から紐解く奈良
講師:鷺森 浩幸(帝塚山大学 文学部教授・奈良学総合文化研究所長)
▼15:10~16:10 第2部/写真家・永野太造氏の軌跡
講師:服部 敦子(帝塚山大学 文学部講師)
永野氏は、著名な写真家の入江泰吉や渡辺義雄らとともに、仏教美術を研究する上で基本となる書籍「奈良六大寺大観」(岩波書店)や「大和古寺大観」(同)に多くの作品が掲載されている。ただ、個人の写真集などが極めて少なく、その活動については、ほとんど知られていなかった。
同学園によると、「奈良学」を提唱し2013年に亡くなった帝塚山短大名誉教授の青山茂さんと永野さんが懇意だった縁で、昨年、永野さんの家族から寄贈の話があったという。
ガラス乾板は寺院名や仏像名が書かれた厚紙の箱に収められ、八つ切りサイズ( 16.5×21.6cm)17~18枚入りの396箱と、四つ切りサイズ( 25.4×30.5cm)約10枚入りの65箱あり、推定約7000枚に及ぶ。1枚ずつ薄紙で包まれ、撮影時期などが記載されたものもあるという。写真は光の角度でコントラストを出すといった芸術的な撮り方ではなく、細部まで観察できる資料写真の撮影方法が徹底されている。大判サイズでガラス乾板というところからかなりの重量があり、軽トラックで何度も往復して大学へ運んだという。
▽12・8が過ぎ、焼け跡闇市派を自称した野坂昭如氏逝去。「戦後が圧殺されようとしている」という重い言葉を残して…… 合掌。