奈良博「なら仏像館」のリニューアルについて |
きのう19日午後から、中部公民館で「奈良学セミナー」の第2講が催された。講師は奈良博の岩田茂樹氏(上席研究員・美術室長)で、演題は「なら仏像館と奈良の仏像」だった。興味深い話満載だったが、特に「なら仏像館」に既に2回ほど行った身で感じたことから、リニューアルについてを取り上げてみたい。
話された要点は
(1)自由動線→ 半固定動線
(2)推奨ルートを逆転→ 室番号の変更
(4)建物の内側に内壁を立ち上げ、上部を梁で連結。内壁・梁の上面から間接照明を照射。梁を利用してダクトコンセントを設置し、自由度の高いスポット照明が可能に
(5)回廊・四隅の展示ケースは高透過ガラスを採用、さらに低反射フィルムを貼付 *写り込みが大きく軽減される
(6)すべての展示ケース・展示台は免震対応
(7)展示ケースの密閉度を飛躍的に高める *水の浸入は完全に防止
というところだった。
4月29日のリニューアルオープン直後の新聞やTVの報道は、上記の改良を是とした好意的な取り上げ方が多かったと記憶する。天井からの間接照明などで見やすくなったことは、一部の人からは森厳さや宗教性を失わせたという批判も有ったのを聞いた。季節毎に東大寺・興福寺の僧侶による展示場の仏像の供養は、他館に例のないものであり「なら仏像館」の特徴を出した行事だと思う。
今回のリニューアルで感じた不満は、岩井氏が真っ先に上げられた入館者の動線を固定する点にある。以前なら入館したら、目の前に中央室の広い空間が目に飛び込んできて、そこに多くの仏像が立っておられるのを拝見する感激があった。今回のリニューアルでは入った途端目に前を遮る大きな半透明のついたて?が立ち上がり、中の状況を見る事を拒否する。否応なしに(2)の動線に従って見学するほかなく、このやり方がいいのかはなはだ疑問に感じる。流れが限られると、逆行することは入場者の邪魔にもなり、再び見たいという場合の心理に強い抵抗感を生じる。この点は今回のリニューアルで不満を感じる次第で、同行したものも同感だった。どういう順序で見ようと勝手という自由さを取り戻して欲しいものである(尤も今の展示のままで遮蔽物を外せば、大きな阿弥陀立像(兵庫県・浄土寺)の背面を拝する事になるが……)。
▽館名の文字は〜
入口の「なら仏像館」の文字は、「三宝絵断簡(東大寺切)」から集字したものだそうです。