平城遷都1300年祭の目玉の一つとされる「遣唐使船復元」を考えると、絵巻物に出てくるのを参考にしたといわれる。中世の絵巻に遣唐使船を描くものがあり、今回の復元工事の参考資料とされる。それを実際の絵巻で見ようと手元のものを繙いてみた。今までにも紹介された『吉備大臣入唐絵巻』のほかにも『唐征絵伝』に描かれていることが判った。
◆◆『吉備大臣入唐絵巻』4巻はアメリカのボストン美術館所蔵で、昭和7年の末にたれ一人として知らぬ間に売却されたといい、これをきっかけに『重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」(昭和8年)の制定になったという曰くつきのもの。当初は縦32.0cm、全長24.5mに及ぶ長い一巻であったが、昭和39年改装されて現在の四巻になったという。鎌倉時代、13世紀の製作といわれる。
船の絵に対して遣唐使船の着岸と説明する。
◆◆『唐征絵伝』5巻 鎌倉時代13世紀の作。唐招提寺蔵
唐招提寺の開祖鑑真和上が、中国より日本に渡来して戒律宗を弘める次第を描いた作品。絵は六郎兵衛蓮行の描いたもので、永仁六年(1298)に鎌倉極楽寺の忍性が施入したもの。この中に栄叡(ようえい)・普照(ふしょう)らが遣唐使船で渡海する場面がある。白と紅との塗り分けた船体がいかにも美しい。前に2つの楼台、うしろには太鼓を据えた艫楼。中央にきょう(广に喬)屋(船室)が見える。云々・・・・。
いずれも出典は中央公論社版「日本絵巻大成」の3,16巻より引用。
現場での復元工事は?、下の写真のように甲板部分での工事のように見受けられた。